ビーチdeさなしま 1







「海が見えてきたよ!」

「人がこぎゃんとおるばい。都会はどこ行っても人間が多かねぇ〜」

「駐車場はどこもいっぱいじゃのう」

「真田隊長、あそこが空いてるであります!!」

「じゃかあしいわ黙っとれ!!運転中に話しかけんな言うとるやろ!!死にたいんか!?隊長、そこは両隣りに車が停まっとるから向こうに止めましょ」

「向こうだとだいぶ離れてるぞ。ここに止めた方が浴場に近くていいんじゃないか?」

「絶対ダメです!周りに車がない所やないと俺は降りません!!」

「なぜそこまで頑なになる必要があるんだ?わかった、あっちに止めればいいんだな」



前後左右に駐車車両がない所を選び停車した。少し斜めになっているが、ぎりぎり白線内だ。

た、助かった…。レンタカーに傷でも付けたら大事やん。隊長はバックもようできんもんな・・。あんな密集地帯に止めさせるわけにはいかんねん。



「潮風が気持ちいいですね、真田さん!」

「なにどさくさに紛れて真田さんに近づきようとね兵悟君!真田たいちょーう、お荷物お持ちしまーすvv」

「このパターンも飽きたな」

「なあ・・。軍曹、降りないんですか?」

「今降りる・・・」



なんでこいつら隊長の運転が平気なんや?俺は毎回へとへとなんに・・。機長みたいに、恐怖心を植えつける目的でわざとジグザグ運転しとるわけやないんやで?真面目に走ってアレだとわかっとんのか・・・?

大体なんでヒヨコが付いてくんねん。せっかく隊長と二人きりでデートやって浮かれとったのにィィィィ!!



鬼の形相で車を降り、「お前ら!言わんでも自分の荷物は自分で持ってけ!!」と怒鳴りつけた。

「そがん怒らんでもよかろーもん。自分の分くらい自分で持つさね。真田隊長、行きましょーv」

「こら石井!隊長に気安く触んな!!隊長も、野郎に腕組まれたらちゃんと嫌がってくださいよ。こいつら調子に乗るでしょ!」

「さっきから何を怒ってるんだ。別に腕くらいいつも組んでいるだろう?」

「!?真田さん、誰といつも組んでるんですか!?俺とも組んでくださいよ!!!」

「ちょっ・・たいちょ!?ななな何ゆっとるんすか!(真っ赤)そないいつも組んでるわけやない・・・・てか神林!貴様も無邪気な顔して腕絡めんな!!隊長に近寄んなー!!!!」

「このパターンもそろそろ飽きてきたな」

「なあ・・。・・・このダンボールなんじゃ?えらいでかいのう。誰の荷物じゃ?」

トランクの大部分を占めている茶色のダンボール箱を大羽が持ち上げようとした。が、持ち上がらなかった。

「ぐっ・・・。なんじゃこの重さは!持ち上がらん!!タカミツ手伝ってくれ!」

「おう。うっ・・本当に重いな。何が入ってるんだ…?」

ヨロヨロとダンボールを運び出す二人に気づいた真田が口を開いた。

「それはスイカだ。先週、商店街の福引で当たったんだが数が多くてな。腐る前に皆で食べようと思って持ってきた。すまんが海岸まで頼む。俺は場所取りをしてくるから。」

そう言い捨て、さっさと海水浴場に向かって歩き出す。

「真田たいちょー。置いていかんといてよ〜」

「メグル君、真田さんにくっ付きすぎ!そっちの手ぇ離してよ!!」

「さっきから隊長に触んな言うてるのが聞こえんのかチンカスがーーー!!!!」




「『自分の荷物は自分で』じゃなかったのか・・・?」

「泣くなタカミツ。俺はお前がいてよかったと、心底思っとるぞ…」

巨大ダンボールをえっちらおっちら運ぶ、不幸なヒヨコ2名だった・・・。







「シートはこの辺でいいんやないすか?」

「そうだな。佐藤と大羽、ダンボールはここに置いてくれ」

「は、はい」

「はぁはぁ・・・やっと着いた…」

「重いのにすまなかったな。二人には特別にこれをやろう」

悪ぶれもせずそう言い放った真田がダンボールから取り出したのは・・・

「パイナップル・・・?」

「そうだ。高嶺からお裾分けだと貰った。スイカと一緒に割ったら面白いんじゃないか」

「隊長、スイカ割りするつもりで持ってきはったんすね…。でもパインって割れるもんなんすか?皮が堅いんちゃいます?」

「力いっぱい叩けばつぶれるかもしれない。と、高嶺が言っていた。心してかかれよ」

「大羽、俺らはスイカじゃないのか・・・?(小声)」

「そうみたいじゃのう…。重労働したのに、普通叩き割って食べる物じゃない果物をつぶさなきゃならんのかぁ。はははははは・・・・(遠い目)」



「よし。早速スイカ割り開始だ」

「えっ?泳がんとですか?」

「早朝に出発したから腹が減った。海は食ってからだ」

そらそうや。通常1時間で到着するところを3時間もかかったんやもんなぁ。

道が込むことも隊長の運転がのろいことも予測しとったが、大事なこと忘れとったわ。隊長は車線変更できんねや。今まで一本道しか走らせとらんかったけど、次回からは広い道路でも練習させんと…。



一人考え込みうなづく嶋本を不審そうに眺めるヒヨコたち。羽田に来てまもない彼らには、まだ副隊長の苦労がわからないのであった。

「嶋本さん、どうかされたんですか?」

「んん?なんでもあらへん。でもたいちょ、この場所でやるんすか?」

「人が多い砂浜で棒を振り回したら危ないから、あの海の家の横でしよう。正面は人が多いが建物の横は無人みたいだからな」

「じゃあ移動せなね♪兵悟君、どっちが早く割れるか競争ばーい」

「望むところだよ。絶対負けないからね!」

神林・石井が早くも走りだそうとするのを真田が止めた。

「待てお前たち。まだ説明は終わってないぞ。普通に割るだけでは立派な勝負とはいえない。少し難易度を高くしよう」

「(これはレジャーやなくて勝負なんすか!?負けず嫌いが揃いもそろってんのにどないなるんやろ…)」

皆が見守る中、真田は砂浜に図を書き始めた。

「「「「「????????(砂上なのに達筆やな。絵は下手やけど…)」」」」」

「サーキット訓練の応用みたいなものだ。二人一組でバディを作る。一人は目隠し、一人は後ろから誘導する。逆立ちでスイカを割るのは困難だから、普通に立ったままでいい。だが、障害物の多い林を通るように。店の裏側にある林を通過し、店の横でスイカを割る。そして目隠しをつけたまま一玉完食。誘導している奴が食わしてやれ。食い終わったら交代して、今度は逆立ちしろ。店の正面にある屋台で誘導者がイカ焼きを買い、その間もう一人は逆立ちのまま待機。買い終わったら人ごみに気を付けながらゴールする。木や他の客にぶつかったらその場で失格だ。簡単だろう?」

「シンプルにきついな・・」

「きついんというより恥ずいんじゃが・・・。ホントにやるんか?」

このレスキューマシンを誰か止めてくれないだろうか・・・

普段鬼のようにしごく教官すら、この人に比べればとても優しいのではないかと感じてしまったヒヨコたち。

ヒヨコの縋るような視線を感じ、嶋本は苦悩の表情を浮かべつつうなだれた。

「隊長・・・、公務員が公共の場で、そのような行為をするのはいかがなもんやと思いますが・・・?」

「スイカ割りだぞ?違法行為をするわけではないのだから大丈夫だ。・・嶋本は反対なのか?」

親愛なるバディから、悲しげ(?)な顔で見つめられては一たまりもない。

「まさか!俺は隊長の言うことに反対なんかせんですよ!!おいチンカスども!さっさと準備せえ!!!」



泣く子も黙らせる鬼軍曹も、神兵には敵わないらしい。

普通に海水浴を楽しめると思って付いてきたことを後悔したが、後の祭・・・・。







「真田さん、準備完了です」

「では始めよう。嶋本、バディはどうやって決めようか」

「はーい!オイは真田隊長と組みたかで〜す!!」

「ずるいよ!俺だって真田さんとがいい!!」

「公平にじゃんけんで決めればええんじゃなかろうか」

「待て。神林っ石井と組め!!」

「はあ!?」「え!?」

「で。タカミツ、大羽と組め。俺は隊長と組む。これで決まりや。ええでしょ隊長?」

「でも・・・・」「ばってん・・」

「文句言うな!!」

「それでいいぞ。俺もヒヨコ隊の成長具合を見てみたいからな」

「う・・・。真田隊長がそう言うなら…。デタラメ教えたら許さんけんね、兵悟君!」

「そんなっ。メグル君じゃあるまいし!!なんでいちいちそういう言い方しか・・」

「貴様ら毎回毎回ぎゃーぎゃーうるさいっちゅーねん!とっとと位置につけ!!全員が一気にスタートしたらお客さんの邪魔んなるから、一組ずつスタートや。勝敗はタイムで決める!!」

「荷物を運んでくれた礼に、大羽・佐藤組をトップバッターにしよう。パイナップルとスイカの両方を置いているが、お前たちはパイナップルを割れ」

「え・・俺らからなんですか?」

「とんだお礼じゃ・・・」

トッキュー隊員の面子をかけた勝負が今始まる・・・。



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渋谷が追っかけしてるラブサイト「しま魂!」様で、
3000HITを渾身の力で踏み抜き、その場で速攻で(パライソ様の気が変わらないうちに)リクした品です!!!!!
おっ、お宝や!どないしよ!も、死んでまう…!(2に続く)