テレパシー





官舎の2階、右から3番目の部屋に、明かりがついてる。
「もう帰っとるんや」
ヒヨコどもをシバキ倒した帰りに羽田に寄ったら、すでに帰宅した後だった。

「……」
もう、3日も逢っていない。
毎日かならず報告の電話をするから、声を聞いてはいるけど。

顔、見たいなぁ。
そう思ってここまで来たが、いざとなると躊躇してしまう。
何度も行った部屋で、合鍵も持っていて、部屋の主が眠っていてもその隣にもぞもぞと潜り込んだりしたこともあるのに。
なんでか今日は、ここから先に足が進まない。
明かりを見上げたまま、動けない。


やっぱり帰ろう。
そう思ったら足は自然に踵を返す。
そしたら後ろで窓を開ける音がした。
からり。
思わず、振り返ってしまう。


シマ。
声なんか聞こえないけど唇の動きでなまえを呼ばれたのがわかった。
嬉しそうに目を細めて。


なんで俺がおるてわかったんやろ。
部屋に上がってから聞いてみた。


そのひとは笑って、
「なんとなく」
としか答えてくれなかった。










「よる」シリーズ 第三弾。
そんでお泊りして抱っこしてもらって寝るといいよ。