++月見++ ピルルルルッ! ピルルルルッ! ピルルッ! 「もしもし、どうした?」 携帯のディスプレイには嶋本の名が出ていたのを確認し、 相手が名乗る前に聞くと、くすくすと笑う声がした。 『こんばんはぁ!ちゃんと確かめて出てます?』 「あぁ、判っていて出ている」 『へへっ』 笑う声が上機嫌で、何かを飲む音が一緒に聞こえる。 「飲んでるな」 『飲んでまーす!』 「酔っ払いか。で、用件は何だ」 『んーっ外見てくださいよ。お月さんがきれーですよ』 言われたとおりにカーテンを開ける。 部屋が既に暗いせいもあるが、月明かりが凄かった。 思わず見事だなと感銘すると、 「そうでしょーっ」と、まるで自分の手柄の様に笑う。 「綺麗やったから隊長にも見て貰いたかってん」と、 誇らしげに言った声の後ろで、車が通り過ぎる音が聞こえた。 「嶋本、今何処に居るんだ」 『あっバレました。隊長の部屋のまえーっ』 窓を開け、ベランダに出て下を覗くと、確かに手を振る嶋本が居た。 「何をしている。早く上がって来い」 『えーっいいっすよ。眠れへんから酒でも飲もうと思ったら切らしてて、 コンビニに出かけてーっ』 「いいから来い!判ったな」 一方的に通話を切ってやると、気付いたのか、 こちらを見上げて来た。 中々動き出さないので、迎えに行くから動くなと電話をいれ様としたら、 漸く動いたので部屋の中に戻り、玄関の鍵を開けて待っていると、 足音がしたのでドアを開けてやる。 「こんばんは・・・」と、先程までの威勢のよさが形をひそめた嶋本が居た。 「よく補導されなかったな」 部屋に上げてやり、水を取りに冷蔵庫を開ける。 「ひどぉ・・・声かけられたとしても、ちゃんと免許証もっ、あっ!」 「没収だ。一体何本買い込んで・・・」 袋の中を見ると、500ml缶が5本。 内2本が空になってて、手に持ったままでいたのも取り上げると、 半分ほど残っている感じだった。 「まだ飲むーっ」 「ダメだ。ほらっ水飲んで、今日はもう泊まっていけ」 水ボトルを渡してやり、リビングへと追いやる。 取り上げたビールを飲み干し、袋の中の空き缶を片して、 残っていた3缶を冷蔵庫に放り込み終わる頃には、 素直にリビングの窓際に座り込んでいた。 「シマ?」 「お月さん綺麗やのに・・・水飲んで月見やなんて」 膝を抱えて拗ねているのだろう。 ボトルが手付かずでテーブルの上に乗ったままだ。 「眠れないとは珍しいな」 基本的に自分も嶋本も寝つきはいい方だし、この程度で酔うヤツでもない。 後ろに支える様に座わると、そのままゆっくり腕の中に落ちて来た。 「お月さんきれいでしょ?」と、甘えた様に笑うので、 再度見上げながら相槌を打ち、そのまま髪を梳いてやる。 「気持ちええ」 「そうか」 「はい・・・ひさ・・しぶ・り・・・」 顔を覗き込むと、目が既にとろんとしている。 よくこんな状態でここまで持ったと思いながら、手を取ると微かに熱い。 眠くなると手のひらが熱くなるとは、子供の様だなと軽く握ってやると、 嶋本の方からも握り返してきたと思ったら、あっと言う間に寝入ってしまった。 安心した様に、体重をかけてくる重さが心地よく感じる。 どうしたものかと考えながら、あぁそうかと今更ながらに反省する。 ここずっと仕事でもすれ違いばかりで、基地で会っては居ても仕事中。 こうやってどちらかの部屋に泊まってまで、一緒に居る事がなかったかと気付く。 スキンシップ不足で寝付けなかったのかと、 自惚れる気持ちが湧いてきて苦笑する。 新人隊の研修期間に入ると、どうしてもすれ違いが多いのも、 困ったものだと思いながら、 違う場所で見上げても、この見事な月は綺麗に見えてるだろうが、 同じ時、同じ場所で見上げた方が、もっと綺麗なんだと気付かせてくれた。 月明かりに照らされた寝顔を見ながら喜ぶ。 また1つ、お互いに共通の記憶が増えた事を、嬉しく思いながら。 *END* 先日、Mさまのとこのチャットにお邪魔した際にいただいた素晴らしきお宝ですっ! 甘えたさんのシマが、可愛すぎます。甘やかすたいちょの愛情が優しすぎます〜!! 毎日頑張って、でも淋しくて我慢できなくなって、けどシラフで来るほど勇気が無くて。 甘えたかな〜でも会いたいな〜とか思いながらビール飲みつつ歩いてきたんでしょうね。 それを優しく受け止める隊長。 なんか今自分の仕事がきっついので、自分が隊長に優しくしてもらったような気になってしまいました。 ありがとうございます!こんなヘタレサイトに飾るのはかなり抵抗あるくらい素敵! ほんと、こんな素敵なお話を書かれるのにサイト作らないのもったいないですよ! 私もMさんとともに熱烈アタックですっ!是非!世のサナシマニアのために!! |