「もぉぉ隊長のアホー」 怒ってる、というよりは困った顔をして嶋本は椅子に座ったまま真田を見上げた。 「あ〜、洗てこなあかんかな、コレ」 布巾で制服の汚れを拭いていたのだが、思うように取れなかったらしく、ぶつぶつ言いながら立ち上がる。 手にしていたソフトクリームの残骸を急いで食べてしまってから、カラをゴミ箱にひょいと投げた。 「洗面所でちょお洗てきます」 「手伝おう」 「大丈夫っス」 助力を申し出た真田を丁重に断って、嶋本は休憩室を出る。 その後姿を見ていた真田だったが、僅かに遅れて、やはり嶋本の後を追った。 ******* ↓残されたヒヨコ達。 「真田隊長、なんで昼間っからあんなにフェロモン全開なの?」 「軍曹もじゃ」 「眉間に皺寄ってるのに怖くない嶋本さん…」 「どっちにしろ」 「いいもん見た…」 「………いいもん、じゃなか…」 「あぁすごい目してたねぇ、真田さん」 「…星野君」 「怒らせたら駄目だよ、メグル」 にこり。 ……こっちも、なかなかどうして侮れんね…… ******* 洗面所で制服の上着を脱いで汚れた部分を洗っていると、ひょい、と真田が顔を出した。 「シマ」 「あれ、隊長?ええて言うたやないですか」 嶋本の言葉には答えず、洗面所の中に入って後ろ手にドアを閉める。 「暑いから開けとって下さいよー」 その言葉も無視して、後ろから覗き込むようにして嶋本の横顔に顔を近づけた。 「隊長?」 ぺろり。 「ひゃ!」 突然唇の横を舐められて、嶋本の体が文字通り跳ねた。 「まだついてる」 何がじゃボケー!! 口をパクパクさせながら振り返ると、洗面台と真田の間に閉じ込められた。 洗面台に手をついて、まるで檻の中みたいに。 「クリームが、まだついてる」 「あ、ありがとうございます!自分でしますからっっっ」 まだ直接舌で舐め取ろうとする真田から首を捻って逃げつつ、狭まってくる檻に逃げ場を無くされる。 「なん、え、わわ、何してんスかっっ!?」 とうとう、腕の檻は嶋本を捕らえてしまった。抱き竦められて身動きが取れないまま、背中に回った腕がTシャツをたくし上げる。 「ちょ、待ってください隊長っ、て、や、どこ触っ」 「少し、黙れ」 「んん…!!」 唇を塞がれて文字通り黙らせられた。 シャツの中で背骨をなぞり上げている指とは別の手が、後頭部をがっちりと固定する。 このボロくてちっさい基地の洗面所にエアコンなんか勿論無いし、かろうじて換気扇がぬるい空気を循環させている程度だ。 そんなとこで男二人、じっとり汗を掻きながらナニをしている。 「んっ、…ふ」 呼吸まで塞がれて息苦しさに角度を変えた唇を、後を追うように深く繋ぐ。 嶋本の腕が本気の力で抵抗し始めたところで、とりあえず、くちづけからは解放してやった。 無論まだ腕の中に閉じ込めたままだけれど。 二人分の唾液で濡れた己の唇を、肉食獣のような仕草で舐める。 「…甘いな」 「って、ここ何処だと思とるんですかー!」 こんな、鍵もかからんとこで! 頭から湯気を出しそうな勢いの嶋本を見る真田の目は、いつもと同じ。 「鍵がかかるところならいいのか。なら、更衣室に行こう」 「そやって揚げ足取ってっ…!!」 言ってることが常に比べてちょっと変なのは、怒っている嶋本には解らない。 「無防備なオマエが悪い」 「どういう理屈っスかっ──て、うわまじ駄目ですって!」 今度は首筋に顔を埋める真田をなんとか引き剥がそうと頑張るが、 「さ、なださ…!!」 耳の後ろを甘噛されては、力が抜けてそれもかなわない。 人の話をちっとも聞きやしない男に、いい加減泣きたくなってきた。 なんで暴走しとんの、このロボは!! なんか怒らしたか、俺!? 「な、にを、怒ってはる、んです、か…っ」 今にも泣きそうな声がした途端、ぴたりと、肉食獣の動きが止まった。 癖っ毛のうなじを鼻先で撫でてから、顔を上げる。 「たいちょ…?」 「…すまん、ふざけ過ぎた」 「らしく、ないっスよ。マジでなんか怒ってはるかと思た」 むくれて口を尖らせる恋人に、苦笑で詫びる。 「いや、そういうわけじゃない」 「ほなら、なんで」 「…暑いから、かな」 「はい?」 「暑いのが悪い」 「また訳のわからんことをー…」 もうええわ。ご機嫌直ったんならそういうことにしとこ。 嘆息ひとつ零して、それ以上は追求を止めた。 広い胸に額を当てて、ぐりぐりと押してみたりする。 「埋め合わせに、晩飯奢ったってください」 「あぁ」 本当は、ヒヨコ達の前であんまり無防備なオマエに少し腹が立ったんだとは、勝手過ぎて言えない。 ☆お願い! セニョリータ★ Ah あ? どうにもこうにも止まらぬこの暑さ アスファルト砂漠 人ゴミジャングル スクランブル交差点 目が点 キミにヒトメボレ 大都会 ド真ん中で イェイ 求愛ダンス 罪なヒトミ 夏物語 (まわしてDJ いけてるナンバー) 踊りたい! 触れてみたい… Ah さぁ一滴残らず どうぞイェイイェイ (エキゾティック 胸キュン ファンシー) もぎたて果実を もっと頂戴 LOVE微炭酸 イェイイェイ イェイイェイ 醒める前に テイクアウト 激しすぎるよ セニョリータ お互いためらってんじゃ 何も始まらない 鼓動が高鳴ってんじゃん? ならお任せください さぁ手をとりダンス 君ベリーデリシャス ここ間違いなく 灼熱のグラウンド モラルはじく肌 アリ地獄(乗せてね カウボーイ イケてるナンバー) もがけば もがくほど Ah もぅ 一発触発 溢れちゃうねぇ(ヒステリック 先制パンチ) 結局 夏だね 悪いのは LOVE微炭酸 イェイイェイ イェイイェイ 逃げる前にアツイ抱擁 抱きしめたキミ 即タイホ ウスマサアチサヌ チューヌ メキシコ ホントにもっとホットホットベリーホット あんしぇワッター半袖準備してきたのに 汗ダクダク キミはラクダ君 蜃気楼なのか!? セニョリータ (EMBRASSE-MOI MON AMOUR JET' AIME) 渇いた心を潤す一瞬 越える一線 イェイ イェイ イェイ イェイ 周り見えず オフサイド さぁ 一滴残らず どうぞ イェイイェイ (エキゾティック 胸キュン ファンシー) もぎたて果実をもっと頂戴 LOVE微炭酸 イェイイェイ イェイイェイ 一発触発 溢れちゃうねぇ (ヒステリック 先制パンチ) 結局夏だね 悪いのは LOVE微炭酸 イェイイェイ イェイイェイ 醒める前に テイクアウト お願いします セニョリータ おおおお待たせしましたー! 隊長黒い!つーか八つ当たりじゃん!(いやそう言ったら実もふたも…!) しかしシマの受難はまだ続く!(ヲホホ) |