子猫を預かることになった。

「うわ、かっわええなぁこいつ!どうしたんすか隊長!?」

居間でおもちゃをかじっていた赤茶色の子猫を見るや、嶋本が嬉しそうな声をあげる。

知らない声に驚いたのか、子猫がびくっと強張った。きょろりと大きな目を、警戒心も露に嶋本に向ける。

「知人から預かった。今晩だけだが」

「苦手や言うてませんでしたっけー」

床に体を伏せてにじり寄ると子猫が同じだけ後ずさった。けど逃げ去りはせずに一定の距離を保ったまま嶋本を凝視している。

「断りきれなくてな。先輩なんだ」

「ふぅん。これ、なんちゅう猫なんですか?」

「アビシニアンとかいうんだそうだ」

「あぁ!えらい元気なヤツなんですよね確か!」

「そうなのか?…そう言われればそうかも知れないな」

僅かにだが苦笑のカタチに唇を歪めて腕の引っかき傷に目をやる。

嶋本はといえば、いつの間に見つけたのか違うおもちゃを子猫の前にちらちらと揺らして、真剣な顔で相手をしている。

「なんだか、似ているな、おまえ達」

「はぁ?何言うてんですか突然。似てませんてっ」

「いや、似ているよ」

「似ーてーまーせーんー!」

「似てる」

「似てへんっ」

「そうかな。…あぁ、そうか。お前のほうが可愛い」

「───っっっ!!!!!」

「どうした?」

「かかかかか、か、かわっ、かわ」

「可愛い」

「…オトコに言う台詞と違いますよ」

「うん」

「ちょ、聞いてます?」

「うん」

「で、なんで服捲ってんすか」

「うん」

「〜〜聞いとらんし!」



なんだかお前に似てるなと思ったら、断れなかったんだ。







アビシニアンはシマだと思うのです。